和裁士さんのお仕事って? 仕立て代の裏話や仕事の苦労など語ってくれました。
今回話しを聞いたのは、高校の同級生だった和裁士のKちゃん。
旦那さんと6歳の男の子・4歳の女の子の4人暮らし。
今年、新居を建てたばかり☆新居の2階に3帖の仕事部屋が作ってありました。
Q.和裁士を目指したきっかけ
高校3年生の時に、友達のCちゃんから和裁士の専門学校に誘われたのがきっかけかな・・・
学校のパンフレット見せられて「おもしろいかもねー」って言って入って今に至るって感じかな(笑)
―そんな簡単なかんじだったんだ・・・(笑)
そういえば、おばあちゃんも和裁士って言ってなかった??それがきっかけじゃなかったの?
おばあちゃんが和裁士だったのを知ったのが和裁士になってからだったんだよね。
Q.仕事内容はどんなものがある??
着物全般の仕立てと、洗い張り、裄直しとかかなぁ。あと、八掛だけ取り替えてください。ってのもあるかな。お座敷入ったりする人は擦れちゃうみたいでそういう直しも多いし、袷の着物の裏地だけ新しいのにしてください。っていうのもあるかな。
知り合いとかに仕事が和裁士っていうと機織りしてると思われてる(-∀-`; )
―鶴の恩返しみたいに?(●・´艸`・) そんなイメージ持たれちゃってるんだ(笑)
そう。やっぱり着物って一般的じゃないから、着物の生地から作ってるって思われてるみたい。
あと、シミ取りや染めとかもなんでも出来る!って思われてて色々聞かれるけど「だいだいできない。」って言ってある(笑)
Q.洗い張りって何??
洗い張りは、もともとの着物をほどいてしまって湯通ししてからもう一度採寸したサイズに仕立て直すこと。
洗い張りで結構多いのが、お母さんの着物を娘さんにあげるパターンかな。
娘さんにあげようと思ったけど、今の子は昔と比べて大きいから裄や身丈が短くて着れないからって洗い張りする人が多いよ。
←これから仕立てる 洗い張りの着物
Q.裄直しはどんな事するの?
裄直しは袖だけ丈が足りないときに裄の長さだけ直すことで、洗い張りするまでないけど裄が短いとみっともないから。って裄直しだけする人もいるよ。
ここが1番洋服と違うところで、洋服はパターンでサイズが決まっちゃってるけど、着物は作り変えができるものだから長く着られるのも着物のいいところかな。
洋服はサイズ合わなくなったら着られないけど、着物はある程度着付けで調整もできるしね。
―へぇー。言われてみればそうだね。洋服は自分に合うサイズをさがして着るけど、着物は自分のサイズに合わせられるからね。
ちょっと話はずれるけど、昔は夏と冬と同じ反物を使ってたらしくて季節に合わせて作り変えてたみたい。夏になると単衣に作り変えて、冬になったらは袷にしてっていうのを家で女の人がやってたんだって。だから、おばあちゃんとかってだいたいの人が和裁ができるって聞いたよ。1回買えば長いものだからね。
―着物ってそれなりに高価なものだけど、長く着られるっていうのがメリットでもあるんだね。
たまに着るだけだと、お手入れ大変なんだよね。ちゃんとしてないといけないから・・・
Q.1日の仕事量ってどれくらい?
着物の種類やお客さんが急ぎかどうかでもちがうけど、今頼まれてる訪問着は昨日(23日)受けて29日が納期だから、6日で仕上げるカンジかな。昨日、クロネコが持ってきたよ(笑)
―えっ?(*゚Д゚*) 宅配便でのやりとりなの??
今回は宅配便でのやりとりだけど、いつもは取り引きしてる着物屋さんに直接納品しにいって、その時に次の仕事をもらって帰ってくる来るカンジかな。
―行ったけど、仕事がないときってあるの??
それがね・・・結構仕事あるんだよ。
―シーズンとか関係なく?
あんまり関係ないかな。今のところは、大須にあるお店なんだけど、ちょっと特殊で役者さんの着物とかの仕立てが多いんだ。
普通の着物屋さんとかだと展示会があって、その後とかは仕立ての注文も多いから忙しいかな。
Q.1ヶ月にどのくらいの枚数を仕立てる??
一反(着物1着)1週間位??納期にもよるからなんとも言えないけど、ミシン縫いか手縫いかでも時間のかかりかたも単価も違うからね。
今ある仮縫いの状態の訪問着はミシン縫いだからそんなに時間はかからないんだけど、あれちょっと特殊で袖を足すんだよ。
―袖を足す??どういうこと??(´・ω・`)
役者さんが使う着物で、袖がすっごく長いの。だから、そこにまた布を足して縫うからミシンなんだ。袖足すからちょっと割増料金。「袖たしかたらプラス1000円です」みたいなカンジ(笑)そうそう、お相撲さんもサイズが大きいから、布を足して着物作られてるんだよ。
Q.仕立て代ってぶっちゃけいくらくらいもらってるの??
作るもので単価がちがうけど今のところは振袖が25000円くらいかな(*´∀`*) その前にやってたところは17000円くらいだったかな。
―同じものつくるのに、取引先違うとそんなに違うもんなんだね。
そうそう。着物屋さんによって仕立て代ってマチマチみたいだし、お客さんからもらう仕立て代に着物屋さんの中間マージンも含まれているから、ワタシがもらう金額のプラスいくらかをもらってるんだろうね・・・
―なんかちょっと怖いね( ;∀;) 素人には分からない世界だから仕立て代これだけかかります。って言われたら「そうなんだ。」ってなっちゃうよね。
Q.やっぱり仕立てるときのテンションは報酬も関係する??
それはあるね!!(笑)(?v?)
―それなりにもらうと、ちょっといつもよりキレイに仕立てよう。とかって思うものなの??
んー。というか、1枚の単価が高いと枚数をこなさなくてもいい分、余裕は出来るね。
例えば、同じ金額稼ぐなら、単価5000円のを5枚仕立てるよりも、振袖1枚の方が時間にも余裕ができるから、そういうのは多少あるかもね・・・
Q.着物をつくったことがないから、どれくらい仕立て代がかかるのか見当もつかないんだけど・・・
ウチの通ってた学校は大手の呉服屋さんの系列で、当時の話しだから今は違うかもしれないんだけど、夏の初めに浴衣の反物を1万いくらとかで売りだして、夏の終わりには5000円とかに値下げするの。でも実は夏の初めの1万いくらの中には仕立て代も含まれてて、5000円とかに値下げしたら、そこにプラス仕立て代を発生させてトータル同じにして売ってたらしい。目先の値段だけかわるから呉服屋ってこわいな・・・って当時は思ってたよ(笑)
ウチら学生が仕立てると浴衣一反・・・580円だったかな?
―えっ!!?Σ(Д゚;/)/ 580円??
1年生の最初に浴衣を覚えるんだけど、初任給1000円とか2000円とかだったかな(笑)
580円で仕立てても、お客さんは同じ仕立て代支払ってるからね・・・
―それで、学校運営とかしてたんかな?未来の和裁士を育てるためには仕方がないんだろうね・・・
ドコかで実践積まないと、一人前にはなれないからね。
Q.浴衣以外の着物もひと通り経験するの??
そうだね。ウチの学校はさせてもらえたね。
浴衣から始まって、長襦袢、喪服(単衣の着物)、あわせの着物、訪問着とかの柄物、留め袖とか比翼がついてるもの、あとはコートとかかな。
ウチの学校はひと通り経験させて一人前にしてから卒業させるって形をとってるけど、他の学校はよく話しを聞くと、生徒を育たせないらしい。
―育たせない??どういうこと??
最初から教えないんだって。
一人前になっちゃうと安く縫ってもらえなくなるから、あえて部分的にしか教えないみたい。袖だけしかやらせないとか。
―え・・・こわいな。
古風なところもあって、先生の荷物持ちから始めるとことかもあるらしいんだ。そういう世界もあるみたい。
―何年も修行?しないと1人前にしてもらえないってことなんだ・・・
Q.卒業して1人前になったら、自分で取引先は探すの??
卒業前に、学校が提携している着物屋さんと外注契約を結んで仕事がもらえるかな。
何件も提携先があるから一応仕事はあるんだけど、そこはすごく仕立て代が安かったよ。
―卒業しても仕事は保証されるってことなんだね。
だね。でも、仕立て代ホントに安かったよ(笑)
Q今の取引先は自分で開拓したの??
今の所は運がよくって、一緒に学校行ってたCちゃんの紹介で貰ったところなんだ。
Cちゃんは卒業してからそのまま和裁学校の先生になって、他の先生つながりで紹介してもらったんだ。その先生着物が好きで、その着物屋さんにしょっちゅう買いにいってて、ある日ポロッと和裁士って話したら、だれかいい人紹介して。と言われて紹介してもらったんだ。その辺歩いてて和裁士ってなかなかいないからね(笑)
―その辺歩いてて、和裁士っていないわ(笑) やっぱりつながりって大事なんだね。
大手とかだとコネとかも必要みたいで、埼玉に住んでる先輩が全国チェーンの大手着物屋さんと取引してるんだけど、そこがケタ違いに高いんだって!!振り袖の仕立て代が5万とか・・・(-∀-`; )
―えっ!!!??(゚Д゚ノ)
お客さんからはどんだけとってんだ?って思ったけど・・・
―購入者からしたら、こわいわ・・・
ワタシも自分の成人式の振り袖をそこで買って、仕立ては自分でやったから実際いくらで仕立てるのかわかんないけど、表の生地はめっちゃいいものなのに、何にも知らないと思ってむこうが勝手に合わせた裏地を仕立てるときにみたら化繊だったんだよ。
そういうトコであれなんかな?って思ったね。
―ウチが子どもの振袖作るときは買う時ついてきてね・・・そして仕立てもよろしくね。
Q.今までどんな着物仕立ててきた??
ひと通りやるよ。浴衣もやるし、単衣もの、夏前とかは紗とか絽とかも。紗と紗の袷とかもやるよ。後ろの柄を透かせてみせるように。
―紗と紗の袷って珍しいね。
特殊ものになるのかな?
長襦袢もやるし、あと学生のときに死んだヒトに着せる着物も仕立てたことある(笑)
喪服とかは、「死にそうだから急いで!!」って急ぎで入ったこともあったよ(笑)
―コレばっかりはしょうがないよね・・・喪服は予め用意しとかないといけないもんだね。
みんながその辺で見かけるようなのは全部やるかな。
Q.男物の着物も仕立てるの??
うん。仕立てるよ。着物とか羽織とかね。
でも、羽織とかのコート類は着る人が少ないんだろうね。最近はあんまり注文入らないよ。
―袴も??
ワタシはやらないかな・・・でもCちゃんはやるよ。先生だからね。
―役者さんとかの着物で時代劇に出てくるお奉行さんが着てるの(裃)作んないの??
(笑)(ノ∀≦。)ノ
作らないね。でもちょっと作ってみたいかも。
Q.帯は??
帯は違うねー。
専門学校の時、学校も下が帯工場になってて、パートのおばちゃんがミシンで帯縫ってたわ・・・
―*゚Д゚)*゚д゚)*゚Д゚)!!!? パートのおばちゃんがミシンで??
その工場で作られてるのは高価な帯じゃなかったんだろうけど、帯は厚紙みたいなの挟んで直線縫いしてあるだけだから、だれでも出来るものみたい(笑)
―言われてみれば確かに縫うだけだけど、なんか意外だな。
帯はみんなサイズ同じだからさ。着物と違ってオーダーじゃないからね。
でも、名古屋帯はつくったことあるよ。
―名古屋帯って??
銅に巻く部分は半分の幅にして、お太鼓部分はそのままの幅のなんだけど、キレイに半幅になるように三角に折ってその部分を縫うだけ。
―そういえば、高校の卒業作品で帯作ってる子いたね。
いた!いた!!組紐で帯締め作ったりもしてたね。
―ワタシは、着物に日本刺繍したな・・・
ワタシもなぜか椿の花を刺繍したから、今思うと季節決めちゃうじゃん・・・って。着物って季節を前もって前もってだから、いつ着るんだ??椿・・・と思ってさ(笑)
あの頃は、そんなことまで考えないでやっちゃってたね。夏物の着物に椿の刺繍は着れないよね(ノ∀≦。)
そういえば、何年も前の話だけど高校(母校)の先生に呼ばれて行ったんだ。なんか、卒業制作で分からない事あるから教えに来て。って
―そうなんだ!!で、何を作ってて呼ばれたの??
袴っぽいかんじだったけど、結局よくわかんなくて購買のパンもらって帰った。
―報酬、購買のパン??安いな(*≧m≦*) 最近は変わったものを作りたい子も多いんだね。あんまり変わったことやると先生も対応不可でプロが呼ばれたんだね。
Q.留め袖とかに入ってる家紋って、仕立ててから入れるの??
ううん。仕立てる前に家紋入ってくるよ。たまに後から入れるときもあるけど、基本的には反物の状態で紋入れしてから仕立てにまわってくるよ。
―じゃあ、紋入れのヒトもプロだから、こう仕立てるだろうって予想して紋の位置を決めてるってこと??
紋の位置は決まってるから紋の入ってる位置をみながらコッチが「あ。これが袖か」とか見分けるの。紋入れも長さでみて入れてるんだと思う。コレぐらいだろう。ってね。
―スゴイ!!やっぱりプロだね☆
Q.去年、ワタシが浴衣作った時に採寸としるし付けまでしてもらったとき、柄合わせも簡単にさらっとやってくれたよね??
柄あわせね。したね。
一応、背中とか肩とかにくる柄を決めてから断ったけど、みんなそこまで見てないからね。ドコがポイントとかみんな知らないし。
―でも、みる人が見たら分かるよね。ワタシも気になるよ・・・
既成品とかの浴衣って、背中の右と左の柄がつながってなくて、パツン!と柄がないこともあるし、すごい適当だな・・・て思うよ。とりあえず形になってれば。みたいな感じでヘタしたら反物から作られてないんじゃないかな?って思うよ・・・
たぶん普通の反物じゃないだろうね。普通の洋服作る生地をガシガシ切って使ってそう。
―だから既成品は好きじゃないんだよね・・・安い反物でも自分で作ったほうがいいと思ってさ。好きな柄もなかなか見つからなかったしね(笑)
Q.和裁士の仕事って技術だからドコにいてもできるからいいね。
そうだね。転勤も関係ないしね。
宅配便とかでやりとりすれば、ずっと同じ所と取引もできるし。
―結婚して子ども産んでも家で出来る仕事だから続けられるもんね。
和裁士さんって子供が小学校に入ってから復帰するヒトが多いんだけど、ワタシは長男が生まれた時もほとんど休んでないかな。長男、赤ちゃんぽくなくって(笑)。9ヶ月まで寝返りも何にもしない子で9ヶ月で一気に何でもできた子だったから、ほとんど動かなくて、目の届くところで遊ばせといて仕事してたよ。
9ヶ月過ぎたら急に歩き出したから、ものを一気に移動させた記憶あるわ(笑)
2人目も妊娠中は仕事してて、生まれるちょい前から産後4ヶ月くらいまで休んで復帰したよ。やらないと忘れそうで怖いんだよ(・∀・;)
Q.和裁士って仕事で大変な事は??
裁断するときが1番ドキドキするかな。
変なところ切ったらあかんから、ブランクできちゃうと間違えそうで怖いね。
―縫うトコ間違えてもほどいて縫い直しできるけど、1回切ったら元には戻せないもんね・・・ 高価なものだと同じの買って弁償ってわけにもいかないしね。
そうそう。同じものがない場合もあるからね
―責任重大な仕事だよね。
末端の責任は全部追うからね。
出来上がってシミがあったら仕立屋のせいになっちゃうから、必ず仕立てる前に、反物チェックしてシミがあったら事前に報告してOKもらわないとやらないよ。なるべく見えないように隠すけどどうしても見えちゃう場合は先に言っておかないと、責任取らなきゃいけなくなるから不都合あったら事前に報告しておかないとね。学校卒業するときに「自分の身は自分で守れ」って言われたよ。
―「自分の身は自分で守れ」か・・・ そっか。それは大事だよね。
今のところは、あんまり厳しくなくて気楽だよ(笑) ゆるいにわりには、それなりにコレ(お金)もいいからね(*`艸´)
―お客さんがそんな細かいこと気にしない感じの人が多いんかね??
と、いうか、呉服屋さんで売ってるものがB反とかだから。
―そういうことね。だからゆるいカンジなんだね(笑)
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